■日本人拉致問題に関わる小泉首相の再訪朝とその背景

 2004年5月22日の早朝、小泉首相は日本人拉致問題解決の為に羽田空港を飛び立ち日帰り予定で一路平壌へ向かった。年金問題で小泉首相の6年何ヶ月かの未納問題で国会審議が慌ただしくなった時の、突然の訪朝である。一体何があったのか。
 『8人の拉致家族全員の帰国を目指す』と決意を述べて出発した小泉総理だが、25万トンの食料援助、1000万ドルの医療援助と引き換えに5人の拉致家族のみを引き連れての帰国であった。蘇我さん関係の3人の家族は、首相が直接本人に説得を働きかけたが、別のアメリカ絡みの問題で帰国を果たせなかった。また、他の10人の拉致者の新たな情報も得られず帰国したことで、拉致被害者家族会の不満の矢面に立たされてしまった。
でも、国民の今回の訪朝の評価は結構高いものである点が報道で公表された。
果たしてそうであろうか。外向的には、金正日に主導権を取られ、翻弄されたと言って間違いないと思う。もっと十分に戦略を練って、日本の持っている外交カードを一度に切らず、相手の出方に応じて、こちらも対応するなどの方策が必要だったと思う。余りにも、交渉の成り行きで金正日対策、北朝鮮対策が成されていなかったかという点が悔やまれる。
これは首相が国内政治の矢面状態から逃れる為に、国民の関心を一気に外交問題に向けると言うことが閃きにあったからだと思う。よって、その準備・対策が疎かになり、今回のような失敗外交となったと思われます。
 この訪朝の結果、あの『年金未納問題』のトーンがマスコミから一掃されてしまった感があります。これは、明らかに小泉首相の国内政治における勝利です。外交に負けたが国内政治に勝ったと言うところでしょう。
勿論、外交に勝ち選挙に勝つのも目的だったと思いますが、『年金未納問題の払拭』これが小泉首相の目的であったことは、突然の訪問が裏付けていると思います。
 ただ歴代の首相の中でこれだけの表だった外交をやった人、また一つ一つの問題に対して国民やマスコミに対してコメントを残す人はかつていなかったと言うのも事実です。
 だから小泉首相は高い支持率を得られているのだと思います。確かにそういう面で小泉首相は賢い政治家といえますが、国内政治に拉致問題を利用した点は余り評価出来ません。国家威信、人権、人命に関わることなのでもっと周到な準備のもとで行動を徹底して欲しかったと思います。

(2004.05.24)
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