■イラク日本人拉致事件の裏に潜む恐ろしさ

 ヨルダンからイラクに入国した日本人3人がイラクの反武装勢力の一派に拉致され、日本の自衛隊のイラクからの退去を求めた事件で『自己責任論』や『保護に係る費用の税金の使途』など、国内で色々論議がなされた。
また、これら日本人3人がイラクの聖職者の仲介で開放された後も、期間を経ずに日本人ジャーナリスト2人が拉致されたがこれも運良く無事開放された。
 これら一連の事件の流れのなかで、国が入国を控えるように勧告しているにも拘わらず、それが人道支援の目的であろうとも、それを無視して入国して災難に会い、解決の為に国家に迷惑をかけたということに対し、『自己責任論』と『解決の為に使用される税金』の問題が多岐の分野で論じられたのである。
 国の方針を無視して自分で乗り込み災難にあったのだから、解決の為に使われた税金は本人たちに負担させるべきだ。
でも国はイラクへの渡航を禁止していたわけでもなく、人道支援や情報取材活動に出向いた彼らに対して、『自己責任論』をぶつけるの良いとして、税金の経費負担を求めるのは如何なものでしょうか。
 そうすると国民は、税金の経費負担のリスクを負いながら海外旅行・ビジネスに赴かなくてはならなくなる。そして一部の自民党議員から『国の政策に賛同しない人間に対して、開放のための経費を税金から出す必要はない』というような意見が出され、私は第二次大戦以前の日本の状態を思い浮かべて恐ろしくなってしまった。
 日本は民主主義国家である。国の政策と言っても100%の人間が賛同しているわけではないのである。ただ、多数決の原理から決められたにすぎない。なのに国の政策に『賛同しない』というだけで国は金を出さないという意見は、民主主義国家としてあるまじき論拠だと思う。この意見に基ずくと日本人の何割かはこれに該当してしまう訳です。国家は海外においてどんな人間でも危害から守ることが義務付けられていると信じている。
 このような意見が国会議員の言葉から出てくること自体に、日本の危うさを感じる今日この頃である。

(2004.07.30)
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